「旧車を手に入れましてね、荒川さん…」
「いつにも増していきなりだねぇ、カヲルくん。サングラスなんかして一体…」
「ま…ポッカの缶コーヒーでも飲みませんか…」
「僕はコンビニのコーヒーでいいよ。また懐かしいねぇポッカって…しかし、ちょっと汗ばむくらいの陽気なのに全身レザー姿でまあ…さっきからなんで眩しそうに空を見上げてるんだい?」
「ギラギラしてやがる…2スト…空冷…」
「キャブ…チョーク…移り行く時代と共に失われていく言葉たち…」
「あの…カヲルくん?えっと…そうだ、今日は髪をポマードか何かでセットしてるのかい?え?バイタリス?また懐かしいねぇ」
「ま…一服どうです?セブンスターでも…」
「ずいぶん前から禁煙してるよ。だいたいカヲルくんは生まれてこのかたタバコなんて吸った事ない…」
「ライトスイッチ…キックスターター…だがバイク乗りを魅了して止まない言葉たち…」
「…タイヤの選択肢なくね?」
「最後のはディスってるよね」
「荒川さん…自分、そのバイク乗りのロマンを全て…全て手に入れてしまったんですよォ…フッ…」
「それは何よりだけど、その手にした旧車というのが…」
「モトコンポかーいっ‼」
「い、いいじゃないですかー!」
「1981年式…旧車といえば、まぁ旧車か…」
「イイでしょ~?荒川さん。羨ましいでしょ~?」
「あ…う、うん…イ、イイナー」
「でしょ~?車体もメチャ綺麗だし、エンジンだって絶好調!」
「2.5馬力だけどね」
「よーし、しっかり掴まってろよ…海まで飛ばすぜ!」
「原付で2人乗りはダメだから」