「暖冬とはいえ、朝夕は流石に冷えますね、荒川さん。さむさむ~」
「あの…カヲルくん」
「でも早朝はやっぱりイイですよね。なんたって交通量は少なくてチョ~快走!空気は冷たいけど澄んでて気持ちイイ~!荒川さんのCC110も空冷だから、エンジンもきっと喜んでるんじゃないですか?ブンブン!なんちゃって~」
「その…」
▲朝の姨捨からの眺望
「時にこの辺は姨捨山伝説で有名ですけど、今の高齢者ならここらに置いてかれてもウオーキングがてら帰ってきちゃいますよね。セサミンとかロコモアとかでバフをかけてメチャ元気ですもんね~」
「えっとカヲルくん…千曲川展望公園に登ってくるやいなや、当たり前の様にちゃくちゃくとカップラーメンの用意をしているけれど…えっと」
「ちょっと、荒川さん!何をモタモタしてるんですか。もう8:00前ですよ。朝ごはんの時間にしては遅いくらいじゃないですか。さぁ、チャッチャと火の準備をお願いしますよ」
「言い出したら聞かないからなぁ…カヲルくんは…」
▲ガソリン式バーナー、シュポシュポ
「確かに、今日のツーリングでバーナーを使いたいとは聞いていたけど、朝食はコンビニかなんかで簡単に済まして、バーナーは昼にでも使うのかとてっきり思っていたんだよねぇ…」
「晩秋、白い息でシールドが曇るくらいの気温の中を走り抜け、途中で食べる朝ごはんといえば熱いカップラーメンに決まってるじゃないですか荒川さん!やだ~」
「早くお湯沸かないかな…でも、こうしていると思い出しますねぇ」
「ん?ああ、そうだねカヲルくん。もう何年前になるかな…」
▲不毛の地『毛無峠』
「毛無峠に行った時のことだろう?」
「そうですそうです。群馬と長野の境、まさに秘境でしたね」
「荒川さんは、あの時も奥様のバイクに乗ってましたっけ。黄色のFTR、渋かったな~」
「FTRはいいバイクだったけれど、妻が一目惚れしてCC110に乗り換えてしまったんだから仕方がない」
▲ガソリン式バーナー、ここでもシュポシュポ
「あの時の毛無峠は風が強くてね」
「そうでしたそうでした。カップラーメン調理係だった私が」
「調理とは…」
「荒川さんの分の後入れ調味料の粉末を、風でほぼ吹っ飛ばしてしまったのを思い出しました。その節は大変ご迷惑を…クッ、おのれ~!風め~!クリリンのことか~!」
「いいよいいよ。すっかり忘れてたから」
▲後続車を睥睨するヤカンの雄姿
「そういえばカヲルくん、今日はXRのキャリアにむき出しのヤカンを括りつけていないんだね」
「ちょっ、止めてくださいよ~!恥ずかし~。ちゃんと袋に入れてきましたよ、ヤカン。も~、あれは若気の至りってヤツですから。当時は尖ってましたし」
「どう尖ればああなるんだい?」
「ズルズル…ハフハフ…美味し~い」
「ああ、温かいのが何よりの御馳走だね。ズズズ…コーヒーも美味い」
▲開放感が最高のスパイス
「ほんとほんと。フ~…休日の朝に外で飲むUCCのインスタントコーヒーには、スターバックスコーヒーだろうが猿田彦珈琲だろうだライオネスコーヒーだろうが敵いませんよねェ」
「なんか変なコーヒーが混じってたね、最後」
「さあ、お腹も満たされましたし、張り切ってオートバイ神社へ向かいますか!」
「オートバイ神社?」
「奥様が買った新車のCC110、まだお祓いとかしてないんでしょう?ならばオートバイ神社へお参りしに行かなくちゃ‼」
「心配してくれるのは有難い話だけど…そんな神社があるんだ」
「私、以前に行ったことありますから‼ ここは黙ってついてきてください!んだばレッツゴー!」
「えっと…ここが聖高原だから…この道でおそらく…」
「おーい」
次回
オートバイ神社へお参りに行こう。お楽しみに~。