「マキ~、お腹空いた~」
「カヲル、あんたいっつもお腹空いてるよね」
「ほら、あと少しで海だから。そしたら海の家で何か食べればいいじゃない」
「ヤダ~‼ もう一歩も歩けない~!」
「ちょ、ちょっと、なに道路で大の字になってるのよ。他人が見たらどんな風に思うか」
「これは2021年9月22日のアストロズ戦で盗塁に失敗した大谷翔平の図だよ!」
「知らないわよ!」
「もう、しょうがないな…じゃあラーメンでも食べてく?」
「やった~!ラーメンいいね~」
「この近くならあそこか…でもあの店、いつだって混んでるんだよねぇ…」
「ふ~ん、そんなにスゴイ人気店なんだ」
「『ニューハルピン』っていってさ」
「あぁ、やっぱり。今日も混んでるわ」
「ずいぶんとお店の前にバイクが並んでる…」
「そうそう、ここって "ライダーの聖地" とかなんとか言われててさ、バイク乗り御用達の店っぽくて、普段からほぼこんな感じ。バイク漫画でも紹介されたかなんだかで、ラーメン食べにわざわざ高速道路使ってバイクでやってくる連中もいるんだって」
「バイク…バイク乗りっていったらさ、マキ」
「やっぱりいつも革ジャンとか着てるのかな…」
「そりゃ着てるヤツもいるんじゃないの」
「この残暑厳しい折に…」
「さすがに今日はどうかなぁ。知らないけど」
「でさカヲル、以前に来た時はわりかし空いててさ、店内はカウンターやテーブル席もあってそんなに狭くはないんだけど、なんたっていつも混んでる人気店じゃん、これは並ばずに座れたから超ラッキーって」
「バイク…バイク乗りっていったらさ、マキ」
「やっぱりこう…ちょっとワルい雰囲気を漂わせているのかな…サングラスとか…ロン毛とか…」
「そりゃァちょっとスカしたヤツもいるんじゃないの」
「鎖とか首に巻いて、スパイクバット持って…」
「そんなヤツはいないでしょ。知らないけど」
「でさ、ラーメンはいわゆる豚骨醤油でさ。表面はラードで覆われているけどスープは以外とあっさり、でもしっかりコクはあって脂も甘くてねえ。かん水を使った麺は特注らしいけどこれがプリプリで」
「バイク乗り…レザー…ワルい雰囲気…」
「……」
「……」
「ちょっと…カヲル?あの…正確にバイク乗りのことイメージしてる?」
「どんどん客が来るね…残念だけどカヲル」
「そうだね。まだまだディスタンスも必要だし、別のトコにしよっか」
「仕方ないね…でもこういう時は」
「ここから歩いて数分、新潟『あかねちゃん弁当』に決まりだね、カヲル!」
「やったねマキ‼ 明日はホームランだ!」