『おまんた』という名前のお菓子があると噂には聞いていたのだが、この度やっと独占販売しているという新潟県糸魚川市を訪れることが出来た。
しかしおまんた…また風変りな名前ではないか。どんなお菓子なのか姿かたちも想像できない。フフフ。これはお目にかかるのが楽しみだ。
…だがどうしてか、妙に胸がドキドキする。いったい何故なのか。
・糸魚川駅南口にある王国の館
糸魚川の特産品やお土産品を扱うヒスイ王国館で、おまんたを手に入れる事ができるとの情報を得た。ここに大量のおまんたが…待っていろ、おまんた。
…だがまただ、何故かソワソワしてしまう。これは不思議だ。
ヒスイ王国館は駐輪場完備との情報もあるのだが、見当たらないため地元民に習ってその辺に私も停めさせていただく。
どもども~、みなさ~ん。なじょもなじょも~。
原付のご当地ナンバーを見るのは旅の楽しみの一つだが、糸魚川市のプレートは可愛いらしい女性が、枠からちょっとはみ出しているポップなデザイン。カワイイ~。
調べてみると、このキュートなキャラクターは「ヌーナ」ちゃんと云うらしい。なんでも古事記や出雲風土記などの古代文献に登場する伝説のお姫様、「奴奈川(ぬなかわ)姫」をモチーフにしているとのことだ。ありがたやありがたや。
この伝説のお姫様を、今もなお神社で篤く祀っている糸魚川とは、なんと神秘的なエリアなんだろう。
そんな神秘的な糸魚川のお土産の宝庫であるヒスイ王国館、略して秘宝館の中にお邪魔させていただく。ごめんください~。
さて、おまんたはどこだ…
ムムッ!! 貴様がおまんたかっ⁉
と思ったら、ヒスイの巨大原石だった。フフフ。慌ててはダメだな。
・実は日本の国石はヒスイ
ところで、糸魚川は宝石であるヒスイ(翡翠)の日本一の産地だという事を知っているだろうか?
ちなみに、山の中にあるヒスイがゴロゴロと川に流されて、海岸に流れ着く "ヒスイ海岸" と呼ばれる場所が糸魚川にあり、以前には100万円もする原石が見つかった事もあったらしい。ク~…ヒスイも気になるところだが、今はおまんたに全集中だ!
あった‼ 『おまんた 10コ入』!おまんがおまんたに違いないぜよ!
ここで会ったが百年目。盲亀の浮木優曇華の花。ええい、そこになおれおまんた、おまん…って、シ~。
静かに…えっと…その…周囲を見回してからサッとおまんたを手に取り、なぜか欲しくもない別のお土産も手にして、重ねてレジに持って行く。しかし何故そんな事をしてしまったのか…まったくもって謎だ。
・謎の高揚感
おまんたを背負ってそそくさとバイクに跨がり、警察の職務質問や友人との遭遇に注意しながら帰宅するやいなや、装備品を解くのももどかしく自室へ直行。後ろ手でドアの鍵を閉め、おまんたを開封する。ハアハア。
部屋の灯りを落とし『銘菓おまんた』と書かれた個包装を乱暴に破ると、そこには丸裸のおまんた…
否、さらに金ピカの包装が!!
おのれ~…めっちゃ焦らすやん!
改めまして、これが生まれたままの姿のおまんただ!
ど、どんな味がするというのか…ドキドキ。
恐る恐る口へ運ぶと…モグモグ…フツーに美味し~い。
バターの風味がする洋風焼き菓子なのだが、中身は白餡でお茶にもコーヒーにも合うやつだ、コレ。
・いつかどこかで食べた事がある味
プレーン味とコーヒー味の2種類があり、どっちもフツーに美味しい。
日持ちもするから、お土産にだって持ってこいだ。
モグモグ…おまんたを頬張りながら菓子箱に入っていたしおりを読むと、おまんたとは糸魚川地方の方言で「あなたがた」を意味する言葉だと判明した。そうだったのか…なんだ…そっか…
糸魚川まで行ってみて、食べてみたらフツーに美味しい焼き菓子だった、おまんた。方言が商品名の地元愛が詰まった銘菓だった、おまんた。優等生じゃん、おまんた。
でも、この心に残る物足りなさはなんだろう…
そして私は思った…
おまんたは、遠きにありて思うものだ、と。