『みすゞ飴』って、知ってる?
信州の道の駅やサービスエリアとかに、たいていあるヤツ。
アタイあれ、大好きなんだよね。
いわゆるゼリー菓子っていうの?
大正時代だかなんだか、ズイブン昔から作られているみたいだけど、見た目なんかポップで可愛いくない?
味は6種類くらいあったかな。包装されているセロファンにひらがなで「りんご」だの「ぶどう」だの「ももい」だの書いてあって、けっして「アップル」や「グレープ」じゃないわけ。
なんだか、ホッとするんだよね。慌ただしい日常、テンテコ舞いな人生を送っていると、こんなモノが、さ。
低血圧なんだよ、アタイ。朝はブラックコーヒーだって、やっとこさだよ。
その時『みすゞ飴』を、ポンと口に入れるのさ。国産果実を寒天なんかで固めてあるから、ビタミンだってモチ豊富でしょ。
若い肌のあなたに今「ACTION」と叫びたい。
そんな素朴で、ステキなお菓子。
信州上田にあるっていうわけ。黙々と『みすゞ飴』を、職人が手で作り続けている『飯島商店』っていう会社がさ。
100年以上も長きに渡り、広く県下で愛されているなんてスゴイことじゃない?
星だって、落ちたら石ころ。
続けることも、大切ってことよね。
こんなシンプルなゼリー菓子を看板商品にしてるくらいだから、きっと本店だって牧歌的でイイ感じのハズじゃない?
手拭いを被ったお婆ちゃんなんかが沢山いてさ、家族総出で飴を作ってて、囲炉裏なんかあってさ…きっと。ウフフ。
ちょっと!
いきなりドアマンが扉を開けてくれるじゃない。
なにさ、ドアなんて自分で開けるから。
アタイ、イタリアの小娘じゃないんだから。
飯島商店…やってるじゃない、これは。
何が手拭い姉さん被りだの、一族郎党総出で飴作りだの、囲炉裏や合掌造りの屋根の角度は45度から60度だのよ。
こんなモダンで洗練された店内…これは、ズイブンやってるじゃない。
アタイの『みすゞ飴』の朴訥なイメージが…憧憬が…シャングリラが…
「立てばサファイア、座ればダイヤ、歩く姿はアクアマリン」
なんて昔の人が言ったか言わないか知ったこっちゃないけど、ここで陳列されてる『みすゞ飴』って宝石みたいに綺麗…
いつも寝ぼけまなこで、口に放り込んでいるヤツとは別物みたい。
低血圧なんだよ、アタイ。お昼過ぎなきゃ、起きられないよ。
どうもアリガト。
綺麗で若い店員さんが、優しく丁寧に対応してくれるのね。
あなたもSK-Ⅱ…じゃない、ビタミン豊富な『みすゞ飴』でそのツヤツヤの肌を保っているのかしら。
今この肌でいられること、それが理由のすべて。
ちょっと!
慣れ親しんだセロファン包み以外に、高級そうな和紙包みも売っているじゃない。どうなっちゃってるのよ。
でも、このギャップ、商品へのアティチュード、アタイ嫌いじゃない。
和紙のヤツ、一つ頂こうかしら。
あ、PayPayで。
なにさ和菓子っぽくカシコまって、なんだかヨソヨソしいじゃない。
これじゃあいつもみたいに、髪の毛ボサボサでソファーに胡坐かいてヒルナンデス観ながら口に放り込むなんて、出来やしない。
茶室で正座なんて、もう何年もしたことない。
プッ。
和紙になったって「りんご」だの「ぶどう」だの、例のあの飾り気のない文字は替わらないワケ。
フフフ、やっぱり野暮ったいったらありゃしない。
口に入れると広がる、いつもの素朴な果実の甘味と、そして邪魔なオブラート。
ホントこの飴ときたら。まったく。
でも、それがいいんじゃない。
むしろ、それでいいんじゃない。
どんなにガワが変わっても、時代が変わっても、中身は変わんない。それが『みすゞ飴』ってヤツ。
アタイだって、昔からちっとも変わらない。
こんなアタイだもの、アンタ苦労するよ。アンタ、構わないのかい。
フン…『みすゞ飴』、お土産に買っていくんだから。