「海ってやっぱり大きいね~」
「さ、寄り道の時間は終わり終わり。家に帰ろっか」
「あのね…ママ。お願いがあるんだけど…」
「なに、カヲル?あ~、さてはテストでいい点をとったからって、早速おねだりでしょ~?」
「へへへ」
「えっとね、お家でペット…飼っちゃダメかな」
「ペットって、カメとかイグアナとか、ヘビとか」
「違う違う、ワンちゃんとかネコちゃんとかフワフワしてて、と~っても可愛いの」
「ペットねえ…う~ん、パパなんて言うかな」
「ちゃんと育てるもん!ごはんの用意とか、トイレの片づけとかちゃんとするもん!」
「まぁ、カヲルがそこまで本気なら、じゃあ一度ペットショップへ行ってみよっか」
「ペットショップ?」
「そう、ペットショップといったら勿論」
「松田ペットだよね!」
「松田ペット…」
「ほらカヲル見てごらん、あそこの松田ペットの看板、通称松ぺの看板を。あの絵のような可愛いワンちゃんやネコちゃんを飼いたいんでしょう?」
「う、う~ん...」
「カヲルは左のワンちゃんがいい?それとも真ん中のワンちゃ…ネコ?」
「えっと、その…あれ?ママ、この看板って、動物たちの表情が一枚一枚違うよ」
「そうそう、松ぺの社長が一枚一枚丁寧に手書きで描いているんだって」
「て、手書きでー⁉」
「よしっ、じゃあ早速この足で松田ペットに行ってみよー!」
「マ、ママ。わたし、今日宿題がいっぱいあるんだ。今日はお家に帰ろう」
「そう?じゃあ、また今度ね」
(数日後)
「ただいまー」
「おかえりー。手洗いうがいして、おやつあるから早くおいで」
「わ~い!なんだろう、しょっぱいのかな、甘いのかな」
!!!
「マ、ママ‼ これなに⁉」
「なにってカヲル」
「『松田ペット 瓦せんべい』だよ。美味しそうでしょ?早くおたべ」
「おたべって…こんなのどうしたの?」
「ママね、あの松田ペットに人間用お菓子があるって小耳に挟んでさ」
「に、人間用お菓子…」
「越後川口サービスエリア上りにあるっていうからね」
「サービスエリアって、あの旅行に行く時によく通る道...」
「そうそう、その高速道路をバイクで走ってきたんだよ」
「夏には絶対乗りたくないってママがよく言ってる、あの赤いバイクで?」
「気温高いは、油温高いは、ガソリン代高いはの、いわゆる3Tでも~大変」
「3Tってあんまり聞いた事ないけど…でもママ、そんな大変な思いまでしてなんで…」
「真剣なんでしょ、カヲル。ペットを飼いたいって」
「え?う、うん。真剣だよ!」
「ならママも真剣にならなくちゃ。ママ、いつだってカヲルの味方だよ」
「ママ…」
「パパだって、あの人は動物アレルギーだけど、カヲルが本気なら連中と出来るだけ折り合いをつけてみるって言ってるし」
「連中って…」
「カヲル、松ぺの看板を見て悩んでたでしょ?だから松ぺのあの絵をもう1度じっくり見て、気に入ったペットを選んで貰おうと思ってね」
「そ、そんな事で悩んでたんじゃないよ。わたしはその…ただフワフワで…可愛いい」
「みなまで言わなくていいのよ」
「さあ、絵をしっかり見て」
「うわ~っ!」
「もっとたくさん買ってくればよかった?」
「いいよいいよ!ママ、ありがとう。瓦おせんべい美味しいな〜、ポリポリ」
「そうだカヲル、この瓦せんべいにはね、おまけのジャンボシールが付いててね」
「ポリポリ…う、うん」
「カヲルのランドセルに貼っておくから」
「いいっていいって!ママ、その…そうだ、ランドセルを勝手にカスタムしちゃ駄目って学校から言われてるんだよ」
「そうなの?残念だな~」
「わたし、ちょっと部屋に行ってるね」
「ふぅ…も~、なんなんだろう、あの松田ペットって。ママの気持ちは嬉しいけど…今日の夜、あの絵の動物たちが夢に出てきたら…どうしよう、も~」
グワァラゴアガキーン!
「カッコイイ‼ オオタニサン!キャーッ♥️」
「カヲルー。麦茶飲み忘れてるよー。水分補給は大切だからねー」
「いけね、忘れてた。はーい、ママ。今行くからー」
「はい、ミネラル麦茶」
「ありがとう…ん?これって」
!!!
「松ぺの看板マグカップ!」
「いいでしょ?カヲルにいいコップないかな~って思ってたから」
「これも越後川口サービスエリア上りで…」
「絶賛販売中だよ」
「よく見れば、また動物たちの表情が違ってるし…」
「社長の動物への愛や慈しみ、並々ならぬ思い入れとタフなガッツを感じるよね」
「…ママ。こうなったらわたし、がぜん行ってみたくなっちゃったよ…」
「そう!じゃあさっそく松田ペットへ行って、ワンちゃんやネコちゃんを」
「違うの…」
「新潟は長岡市周辺に点在する松ぺの看板を見に行きたいの!」