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ドカッとドコ行こう

略して ドカドコ!

【潜入】トンネルの中にある『筒石駅』に潜ってきたよー

 

ザーン…ザーン…(波の音)

「カヲル!あんた、また大きな音でワケの分からない音楽聴いて‼」

「ンだよ、かーちゃん!勝手に部屋に入ってくんなよ‼」

「まったく朝から、ドンドンパンパンドンパンパン」

「盆踊りじゃねえよ‼ ロックだよロック!ロックンロール!クソみたいに退屈な日常を突き抜けるんだよ!ブレイク・オン・スルー・トゥ・ジ・アダー・サイドなんだよ!黒く塗りつぶすんだよ!」

「リュックだかMr.マリックだか知らないけどこの子は…ちょっと前まで『おさかな天国』を聴いて一緒にサカナサカナ唄ってたのに」

「言うなよ、それを~!」

「ちょっとドコ行くんだい?お昼作ってあるよ。今日はタチウオの煮つけだよ」

「うるせーな!こんな何にもない漁村でくすぶってられるかよ。町に出てマクドナルドでも食ってくるぜ」

マクドナルド…」

ハンバーガー屋のことだよ。知らねえの?かーちゃん」

「ああ、マクダーナのことかい」

「発音良すぎだろ!」

「暗くならないうちに帰って来るんだからね」

「うるせーな。オレの勝手だろ」

「あんたは明るい光を見たら、寄ってちゃう習性があるから」

イカじゃねえよ!」

「ったく、冗談じゃねえっての。いつまでも子ども扱いしやがって」

「とりあえず歩いて駅まで行って、電車で町に出るか…チェッ、ロックじゃねーなー」

「ハアハア…クソ…港から800mって案内されているけど、駅、山の上だかんな。なめんじゃねーよ…ハアハア」

「フ~。昔は海沿いに駅があって、獲れたての魚を電車に運び込んで町へ売りに行ってたなんてばーちゃんがよく言ってたけど、今の駅の立地じゃ考えられねーよな。当時の村のヤツらは、よくこの場所でOKしたよなぁ」

「まァ列車の本数を増やしたかったり、地すべりが頻発するとかで路線を変えなきゃいけなくなって、駅も移すしかなかったってんだから仕方ねーけどよ」

「村の年寄り連中が電車で通院しようとこの駅まで歩いて来れるなら、病院なんて行かなくてもいいくらいロックな健康体だぜ」

「車とかバイクとかに乗れんなら、駅なんか利用しなくてそのまま行けっての、目的地に」

「この駅を使う客が以前はどれくらいたか知らねーけど、今じゃせいぜい1日10人くらいじゃねーのかな。4年前から無人駅だし。見た目プレハブ小屋だし」

「むしろ電車の利用客より、この駅自体を目当てにやって来る連中の方が多いと思うぜ」

「なんたって」

「ホームが地下40mのトンネル内にあるヤベー駅なんだからさ」

「路線変更でこの辺りは電車がトンネルを通るから駅は無くなる予定だったんだけど、当時の村の連中がスタンドアップ・アンド・シャウトしてむりくりトンネル内にホームを作ったんだからロックだよな」

「地上から地下のホームまで、300段くらい階段があるんだからマジヤベー。それでいてエスカレーターやエレベーターなんて、文明の利器はナッシングのエクストリーム仕様。これで普段使いしろってんだからクレイジーだろ?…ハァハァ」

「フ~…もっとも、フェスの時みたく汗だくになっちまっても心配ご無用ご意見無用。駅の中はヒンヤリしていて超クールさ!ど~よ?へへへ。フェス行ったことないけど。…ん?…クンクン…この臭いは…」

「かびるんるん~‼」

「地下構内の空気は湿気っていて、カビの臭いが鼻につくぜこの駅は…マジ地下系ロックって感じ?」

「上りの糸魚川方面行と、下りの直江津方面行はホームへの入り口が違うからウオッチ・アウト!気をつけろよ」

「もし不用意に、行先を間違えちまったりでもしたら」

「こんな風な…」

「こんな風な階段を何度も上り下りしなくちゃならないからな。どんなにシャウトしたって、誰も助けになんて来やしないぜ!オイオイオイ!」

「…疲れたから少し休むか」

「で、こっちが上りの糸魚川方面のホーム入り口。トンネルを電車が抜ける時に一緒に空気も押し込んでくるから、猛烈な風圧を避けるため頑丈な扉が設置されてるってワケ。マジすげー風だから。さしもの西川貴教だって耐えられないだろうぜ」

ガラガラガラ…

「何度来ても怖えェェェ!」

「滅多な事じゃビビることなんてないオレでも、1人で居るとなんかブルっちまうぜ…」

「んで、反対側のホームに行くには…」

「ハアハア…」

「ハアハア…」

「ハアハア…ロックは死なねえぜ…オイオイオイ!」

「ハアハア…こ、ここが下り直江津方面行のホーム入り口で…」

「あっ!」

ゴーーーーッ‼

ゴゴゴーーー…カンカンカン…

「電車が…ゲット・アウト…行っちまった…」

「…」

「ハアハア…」

「ハアハア…」

「なんたって、ほら…」

「電車、一時間に一本だから…」

「ふぅ…」

「おお、いい風…」

ザーン…ザーン…

「かーちゃん、煮つけ残してくれてるかな…」