「カヲルさん、クリスマスどうするんですか~?」
隣のデスクのエリカちゃんが、長野市桜枝町にある『桜枝町太平堂』さんで "タマゴパン" を買ってきてくれたので、お茶を入れて一休みです。
「今年はイブ、火曜日なんだ。エリカちゃんこそご予定は?」
「父が厳しいので、クリスマスは絶対家族で過ごす事になっているんですよぉ。お家は仏教なのに~」
「アハハ。お家の御宗旨は?」
「? 仏教ですよぉ」
「……」
ごちそうさま。
・木曽の冬の風物詩
もう12月になるんですね。
この時期になると、食べたくなるのが長野県木曽地方の伝統的なお漬物『すんき漬け』です。
塩を一切使わず赤カブの茎葉を発酵させたお漬物で、もちろん無塩ですし、乳酸発酵なので体にも良い健康食品として注目されているんですよ。
すんき漬けはとても酸っぱい!
でも温かいお蕎麦に入れると、鰹のお出汁と相まって…これが得も言われぬ美味しさに大変身!本当にクセになる味で、お汁まで飲み干してしまうほど。
例えるならそうですね…
酸辣湯?ちょっと違うかな…。でも勝るとも劣りません!
やって来ましたのは木曽日義、国道19号線沿いにあります『旅籠そば 水車家』さんです。
早速すんき蕎麦を注文しましょう。
まだやってなかったー!
シーズンの時にしか提供されないんですよね。それがまたいいのですが。
道の駅等の店舗なら提供しているような気もしますが、ここのお蕎麦はポキポキーのお出汁ジュワ~なので、とにかく何か上にのっていればと "細切りヤマイモ蕎麦" を注文です。
ズルズル…モグモグ…これも美味し~い)^o^(
すんき蕎麦の時期は2月下旬くらいだったハズ。また来ますね。
・往時の繁栄を偲んで
せっかく木曽に来たんだから寄ってみましょう。
この風景。旅情をかきたてられますねぇ。
どこか遠くにに出掛けたいなぁ…
もう遠くに出掛けてたのでした~!
漆器を扱うお店もあるので、ノゾキながら歩いていると時間を忘れてしまいます。
木曽漆器は本当に素晴らしくて、スリ漆のお弁当箱とお箸は愛用品です。大事に使えば一生物ですよ。
・和洋折衷?
あれ?
『大宝寺』の表札とともに "マリヤ地蔵" の表札が掲げられていますね。
臨済宗妙心寺派といえば、臨済宗最大の宗派ですよ。禅宗のお寺さんに、マリヤとはこはいかに。確かめてみましょう。
おじゃましま~す。
拝観料は大人100円。
団体様(三十名より)は80円とお得ですよ。
ご近所お誘い合わせの上お出掛けくださーい。
受付は無人でした。
レトロな黒電話が設置されています。
小さな子ども達は、この黒電話の使い方が判るかな?トトロに出てきた2号自動式壁掛電話機を見て、「あれはどうやって使うのだろう」と私が思った感じと一緒かな?
カゴにお金を入れ、パンフレットをいただきます。
地図で道順を確認して、さあ行きましょう!
・繰り返してはいけない歴史
道標には目的の "マリヤ地蔵"
看板には "マリア地蔵" と書かれていますね。
「キリシタン禁制の江戸時代に、木曽路にも密かにキリシタンを信仰する者たちがいて、子育地蔵になぞられて作られて像である」
信州にキリシタン…。山奥とはいえ、流通の大動脈である中山道の宿場町ですから、様々な文化が伝わっているのはしごく当たり前のことですけど…でも、やっぱり意外です。だってキリシタンと言われてパッと思い浮かぶのが
"魔界転生"
"美輪明宏"
どれもこれも現実離れしているものばかり。
それが身近に存在するなんて。
「役人に発覚し、頭部と膝、抱かれた子供も破壊されたが、わずかに胸に十字架だけが残っている」
ひどい…大変な時代だったのですね。石像を壊すなんて…。自然と涙が出ちゃいます。
とにかく、お参りをしましょう。
えーっと…マリア像であってお地蔵さんであって、でもマリヤ地蔵なんだし…どうやって礼拝すれば…合掌?
十字?
柏手?
九字?
五体投地?
とりあえず黙祷で乗り切ります!
・大きな宝があるお寺
大宝寺さんは庭園でも有名です。
本堂を通らせていただき、「禅の境地」を表現したといわれるお庭を拝見させていただきましょう。
おじゃましま~す。
まさに静寂閑雅。シンとして、耳が痛いくらい。
立派な本堂です。しっかり襟を正してと…緊張するなぁ。
スヤスヤ…
ハッ!
ついつい畳で横になり、そのまま眠ってしまいました。団体様(三十名より)がいらっしゃらなくて良かった。
このお庭が作庭されたのが享保年中。1716年から1736年の間ですね。江戸時代中期、暴れん坊将軍こと徳川吉宗さんが貧乏旗本三男坊と称して暴れていたころから、木曽はこの幽玄な嵯峨流庭園を綿々と受け継いできたのですね。素晴らしい…
スヤスヤ…
「マリヤ地蔵、見れてよかった。正義と正義がぶつかり、どちらかが悪とされてしまう。それはいつの世も変わらない。キリスト教と仏教が悲しい形で交わったマリヤ地蔵は、人の愚かさを我々に教えているのではないだろうか…」
「独り言が多い人は、寂しがり屋だそうですよ~」
エリカちゃんが横に座り、エコバッグからなにやら取り出しています。
「桜枝町太平堂さんでパンを買ってきましたよ~」
「おや?これは何パン?」
「なんでしょ~」
パカッ
「⁉」
パンの中にプリンが潜伏している… こ、これは
「隠れプリンパン!」
「なんなんです~?」