前回のあらすじ!
木曽谷の中心部、木曽福島にたどり着いた例のバイク2台。そこで「中乗(なかのり)さん」なる地元の英雄に、"物に乗る行為" とはなにか、"ライド・オンという名の人生" とはなにかを教えて貰う。
先程までとは目の輝きが違う二人は、手に入れた谷の酒『中乗さん』を背に木曽路をバイクで駆け抜ける。流れる風景の中、そう、きっとバイク界の "中乗さん" になると心に誓って。
さあ、次はなんだ。 次はドコ行こう!バイク界の中乗さんて一体なんなんだ⁉
「なんです?バイク界の中乗さんて。荒川さん」
「ん?いったい何のことだい?カヲルくん」
・ちゃんこ?いえラーメンです
「もうこんな時間ですよ、荒川さん。お腹空きましたね~」
「そうだねぇ」
「時間です。待ったなし。塩尻場所の開催ですよ!」
塩尻市と岡谷市の境にある塩尻峠(塩嶺峠)途中、『ラーメンショップ 横綱』さんでお昼をいただきましょう。
「しょうゆ…味噌…塩…どれも美味しそう!迷っちゃうなぁ…。何にします?」
「そうだねぇ…」
「?」
「どうしたんです?浮かない顔して。あ!荒川さん、ひょっとしてラーメンNGでした?子どもの時にラーメン屋に追いかけられたとか」
「どんな幼少期のフラッシュバックに悩まされているんだい、僕は。違うんだ、妻のお土産を何にしようか悩んでいてね…」
「木曽福島で手に入れたお酒『中乗さん』でいいじゃないですか」
「妻は下戸なんだよ」
「ゲコ…青空球児…」
「それはゲロゲ~ロね」
「じゃあ私が購入した『木曽開田高原もろこしスープ』を譲りますよ。これ、甘くて美味しいんですよ~!…1個しかないけど…でも、ホントに美味しいんですよ~!…1個しかないけど」
「…カヲルくんのお土産をいただく訳にはいかないな。ありがとう、気持ちだけいただいておくよ」
荒川さんは元プロ野球選手の中村紀洋さんと『くまのプーさんのホームランダービー!』をしながら互いの奥様のことで夜通し話し込み、そのまま朝を迎えるであろう程の恐妻家で知られますが
「妻は気に入らなければ、絶対一切合切金輪際使ってくれないからね…」
と誕生日のプレゼント選びだけでも、一晩で白髪になったマリー・アントワネットばりに心労を重ねているそう。
ともに白髪の生えるまで…白髪の量には夫婦で差が開きそうだけど、夫婦っていいな~!
来ました来ました。私が頼んだ『ネギ味噌ラーメン』です。
お味噌のイ~イ匂い!
荒川さんが頼んだ『しょうゆラーメン(大盛)』も来ましたよ。
「おや?大盛にした憶えはないけど…」
「私がオーダーしておきました…ズルズル…これから諏訪まで行くんですから、スタミナつけなくちゃ…モグモグ」
「諏訪?」
「良いお土産を思いついたんですよー!あ、その焼き海苔ください。パクッ」
寒~いっ!
全国都道府県庁所在地の標高ランキングで第2位の甲府市は270mくらい。それをブッチギリで引き離しての第1位は長野市の約370m。ところが諏訪湖周辺の市町村ときたら諏訪市は760m、岡谷市は780m、茅野市に至っては800m!
高原の定義はおおむね標高600m以上と云われていますので、これは寒いワケです。
冬期に湖面は氷結しますが、全面氷結に至らない年もあります。温暖化の影響なのか、以前より氷も薄くなっているんですって。昔は氷上でスケートやワカサギの穴釣りも盛んに行われ、戦前は戦車の走行や飛行機の離着陸訓練…ってムチャし過ぎ!
でも、ホントに氷が厚かったんですねえ。
・塩羊羹の元祖
ここは下諏訪町、諏訪大社秋宮の隣にあります和菓子の老舗『新鶴本店(しんつるほんてん)』さん。
創業明治6年、初代が考案した『塩羊羹』で知られる名店であり、地元はもちろん県外からの来訪者も後を絶たない超人気店。今日も今日とてお客さんが列をなしています。
みなさま、静かに粛々と並んでいられます。
日本最古の神社の一つと数えられる『信濃國一之宮 諏訪大社』その聖域と同化した新鶴本店を前にすれば、訪れるものみな自然と居住まいを正す事になるのでしょう。
あぁ、心が洗われるよう…
「お邪魔しま~す」
ズドドドド!
ドカドカドカッ‼
ドロドロドロドロッ…
「あれ?心なしか人が少なくなったような…」
「カヲルくーん、駐車場はこっちだよー」
これは失礼しました。お店の対面にちゃんと駐車場がありますから、いますぐ押して移動します。
ヨイショ、ヨイショ…
この歴史を感じさせる店内の造作も、レトロな陳列ケースも、差し込む西日の光彩も、すごく味わい深いです。う~ん、ステキ…でも
「塩羊羹くださーい!今すぐくださーい!マッハでくださーい!」
「すみません、この子お腹が空き過ぎてて…ああ、僕も同じものを一つ」
人気で売り切れてしまう事もある、名代の塩羊羹を無事に手に入れましたよー!
「よかったですね、荒川さん。これなら奥様もきっと喜ばれますよ。『上品な甘さが上品なキミにそっくりだ』とかなんとか言えばさらに良いと思われます」
「ああ、妻も喜ぶよ。ありがとう」
「『砂糖と塩、一見相容れないモノほど、一緒になれば驚くようなケミストリーを起こす事だってあるのさ。まるでキミとボクの奇跡ように』とかなんとか言えばさらに…」
「ハハハ。さあ、もう帰路に就こう。助かったよ」
・他の追従は許さない羊羹界のレジェンド
さて、帰宅後にさっそく名代の塩羊羹をいただくコトとしましょう。
防腐剤等を一切使っていない、まさに生ものですから、美味しいものは美味しいうちに。
夏場は5日、それ以外の季節は7日間が賞味期限とされていますよ。
ジャ~ン!
羊羹の包装なのに、この重々しさ。新鶴の前に道なし 新鶴の後に道できる "塩羊羹元祖" の風格が漂っています。なんだかご利益ありそう。
購入サイズは小、中、大とあり、これはサイズ(5×15㎝)の小。ちなみに特大は箱入りで(30×25㎝)とパーリィーサイズ!買うなら車で行かなくちゃ。
しかしこれ、掛け値なしに美味しいですよ…
甘さと塩加減の調和、歯切れと舌触り、何よりもう一口という後引きが凄まじく、羊羹界の中でもちょっと図抜けています。まさに無限羊羹です‼
厳選された小豆と地元の寒天を用い、創業以来変わらず楢の薪を焚いて職人さんが練り上げる手作りの一品。敬意を持って、口に運ばなければ…
ちなみに羊羹表面の綺麗な波模様はもともとの仕様ですが、断面の縦線はというとですね
チーズナイフで押し切ったら付いちゃったモノなのでしたー‼
たいへん失礼をば致しました~!