/* 記事内キーワード下線を消す */

ドカッとドコ行こう

略して ドカドコ!

【地獄ラーメン】木曽『ラーメン55』につき合ってもらう

 

最も危険な食べ物、それはラーメン。

たくまずして仕掛けられた丼の中に眠る殺し屋。

それは突然に目を覚まし、偽りの平穏を打ち破る。

木曽は巨大な罠の谷。

そこかしこで、赤い信管をくわえたラーメンが目を覚ます。

全てを包んで煙る谷底に、己のランチを求めて、カヲルが彷徨う。

深い谷に踏み入ってもカヲルを待っていたのは、また地獄だった。

 

inakakaoru.hatenablog.com

 

人の運命を司るのは、旨味か、辛味か。

だが、カヲルの運命を変えたのは、地獄と呼ばれた、あのラーメン。

柏崎の海岸で走り抜けた戦慄が、今、木曽の谷に蘇る。

その店の名は、木曽町『ラーメン55』

地獄を見れば 心がかわく

食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。

箸という牙を突き立てねば、生きてゆかれぬソドムの店。

ここ、木曽谷で明日を買うのに必要なのは、カプサイシンと少々の危険。

人の運命は、神が遊ぶ双六だとしても

上がりまでは一天地六の賽の目次第。

1と出るか6と出るか、それとも55と出るか、謎に挑む開扉入店。

炎熱の木曽谷に第3幕が開く。

カプサイシンの臭いに導かれ、カウンターの赤色に照らされて、危険な奴らが集まってくる。

ギラつく欲望を見え隠れさせ、オープンキッチンというコロッセロを囲む木曽の谷の拳闘士たち。

狂おしいまでの空腹が、辛味への渇きと野心が、殺意と闘志を生む。

心に地獄を持つ者同士の、不可思議なる合意が、壮絶なる発注と受注を生む。

『地獄ラーメン』

「味噌味の辛口ラーメンです(あくまでも自己責任においてご注文ください)

人の運命を司るのは、神か、偶然か、このメニュー表か。

運命の、辛さの選択は1~5倍。

1倍 まあまあ

2倍 ちぃーと辛い

3倍 命を的に夢買う銭を追う

4倍 ちゃちな信義とちっぽけな良心が、木曽の谷に金をまく

5倍 ゴジラになって口から火が噴けるかも

さだめとあれば 心をきめる

いよいよキャスティング完了。

1倍など所詮遊びだ。情け無用、命無用の5倍をオーダーする。

カウンターの左右から、小上がりから、熱い視線が突き刺さる。

カヲル、敢えて火中の栗を拾うか。自爆、誘爆、御用心。

むせる

辛いとは正にこれ。

スパイシーとは正にこれ。

口中を荒れ狂う辛味と痛み。

時空がねじれ、地層が断裂する。

木曽谷の陽が届かない暗闇に、巨大な鼓動が響き始める。

辛味噌で腫れた口。

地獄のラーメンと人の言う。

少し潤んだ涙目がせせら嗤う。

ヒリヒリ、ビリビリ、ジンジン、カッカカッカ。どれ一つ取っても辛い食べ物では命取りとなる。

それらを纏めて無謀で括る。

誰が仕組んだ地獄やら。

なぜ、どうして戦う。

はじめから感じていた、心のどこかで。

強い辛味の裏にある旨味を。

激しい闘志の底に沈む悲しみを。

赤いスープの光の中に、人々が見たものは、愛、戦い、運命。

雨は汚れた大地と、焼けついた舌をみそぎ、流れとなり、川となって常に大海を目指す。

人の世の喜びも悲しみも辛味も、一瞬の水面の輝き。

万物流転。

人は流れに逆らい、そして力尽きて流される。

辛味を鎮めるヨーグルト。

痛みを癒すアイスクリーム。

歴史の果てから、連綿と続くこの愚かな行為。

ある者は悩み、ある者は傷つき、ある物は自らに絶望する。

だが、激辛という名の営みは絶えることなく続き、また誰かが呟く。

たまにはカプサイシンの臭いを嗅ぐのも悪くない。

 

次回「休息」

カヲルが飲む木曽のファミマカフェラテは甘い。