なんですか、この渋滞は。いったい何が始まるんです?ゾロゾロとたくさんの何かが、ゆっくり移動して行く手を阻んでいます。これは公道を牛耳られているようなものですね。あれは…牛?いやいや、なんだか茶色いですね。
やっぱり牛さん達でしたー!ジャージー種の牛だから、毛色が茶色かったんですね。
それにしてもたくさんいて、まさに牛歩、その景色はインドさながら。どんなに先を急いでいたって、車も、バイクも、牛さん達の動きに合わせるしかありません。何故ならここは…
日本で初めて開設された最古の西洋式牧場。群馬県下仁田町にある『神津牧場』だからです。
創立は明治20年。酪農発祥の地。牛さん達をリスペクトできなければ、この地に足を踏み入れる資格はありません。
「キリンさんが好きです。でも、牛さんの方がモ~ッと好きです。牛だけに」
この精神です。あ、神津は開設した方のお名前だそう。
牧場へたどり着くには、少し手前に設けてある駐車場で車を降り、徒歩で行く必要があります。
「あー、歩くのかったりー」なんてブーブー言わない。そこはモ~モ~でしょ!そう、ここは牛さん達のテリトリー。
歩くといっても大丈夫。爽やかな高原の風と木漏れ日のなかを行くのですから、アッという間。その心配は取るに足らないこと、つまり "九牛の一毛" と言えるでしょう。でも…牛さん達の刹那の落とし物、フンには気をつけて。
景色も楽しみながら歩いていると、ほら、もう着きましたよ。取り越し苦労で済んでよかった。"呉牛、月に喘ぐ" でしたね。
食堂や鉄板焼きコーナーなど、施設もしっかり整っていますからご安心。
何にしようかなぁ…と悩んでいると、常連らしきご年配のご夫婦が「ここのソフトクリームは美味しいわよー」と声を掛けてくれました。なるほど。"年寄りの言うことと牛の鍬は外れない" とも言いますからね。
ソフトクリームをくださーい!
ハム…モグモグ…ハム…モグモグ…美味しーい)^o^(
ミルクの味がしっかりしているのに後味サッパリ。これは何本も食べれちゃいます。あっ、いくらのんびり出来る牧場とはいえ、ベンチで横になってはダメですよ。"食ってすぐ寝ると牛になる" なんて言われても知りませんから。
やや!牛の楽園かと思ったら、ヤギやヒツジ達も居るじゃないですか。ビックリしました。"牝牛に腹突かれる" とは正にこのこと。
でも、子供たちは大喜び。この笑顔の前では、牛だのヤギだののこだわりなんて "蝸牛、角上の争い" に等しいことです。いろいろな動物に触れる機会は、とても良い経験と思い出になるでしょうね。
ヒツジ達も大活躍! "羊を以て牛にCOW…じゃなく易う" みなで協力して、牧場を盛り立てていって貰いたいものです。頼みましたよ。
居ました居ました。さっきの牛さん達です。
どうやら午後1時頃に行われる神津牧場恒例の『牛の行進』だったようです。でも当の本人達はそんなこと知った風もありません。まさに "風馬牛" といった態です。
あっ。搾乳体験をしている人もいます。いっぱい搾れればいいなー。
その搾ったフレッシュミルクで作られたソフトクリームを、労せずいただきまーす!なんて、"人の牛蒡で法事をする" とはこのことですね。
こんな山奥で、日本で誰もやらなかった西洋式牧場を始めようなんて、さぞや試行錯誤の繰り返しだったでしょう。
それこそ "闇から牛を引き出す" ことだったのかもしれませんね。
コツコツと続けてきて120年以上。
"商いは牛の涎" とはよく言ったものです。やはりパイオニアは素晴らしい。"牛を食らうの気" で、大きな目標を持って物事に取り組んでいきたいものですね。
取りあえず私は神頼みで、牛に引かれて善光寺に行ってきまーす。