お、折れてるだァ!
あんだまァ…ポッキリと…
オ、オラの傘の骨がァ…
雨降りに、ちょっくら本屋で『ぷれじでんと』でも買うべえかと寄って、へェ、店から出て傘立てから傘ァ抜いてみたらこのザマだ…。
誰だァ、乱暴に扱った奴ァ…野郎、ぶっ張りけえすぞ!
それにしてもオラが『週刊プロレス』を熟読していた短ェ時間に…
さては天狗の仕業か?
こうなったら "人間不信" だァ!
人が少ないところに行くべえ!
バイクで明日なき暴走ぶつべえ!
どいつもこいつも、ミラーの点にするからそう思え!
妨げェぶつ奴があらば、どいつこいつの容赦はねえ。片っ端からぶっくじいてくれるから。こんでもハア、村では "モミアゲのないガイ・マーティン" と呼ばれているくらいだァ。
野郎、覚悟ォぶてェッ!
どけどけーッ‼ 押し通るぞーッ!
こちらは山ン中ァ走る暴走族だァ!
山ン中…暴走族…族…賊…
つまり "山賊" だァッ!
♬~
お天道さまが 東に出れば
西の空に 雲がすっとぶ
ヤッホ ヤッホホホ
おいらは 山賊
んん?あんだァ、呑気にモ~モ~と鳴き声が…
放牧されている牛どもでねえか。
のんびりやっているところ、ちょっくら騒々しいがご免なすって。
なんしろ山賊なもんで。
しかし…あんだまァ、山ン中とはいえ、結構人が住んでるもんでねえか。
ただ、どこも高齢化率は高そうだんべえ。
朝っぱらから年寄りが打ち乗る軽トラやセニアカーなんぞが方々走り回っていて、皆えかく元気でねえか!
ここは連中と一騎討の勝負をぶっても、埒が明かんべえ。年配者は敬んのが人の道だんべえと思うんだ。
すんだら村ン中は大人しく、ゆっくり流すくらいで進むがよかんべえ。もしも無闇に飛ばすなんちゅう道楽(のら)べえこいてるヤツがいたら…野郎、張っくりけえすぞ!
山賊だから、普段の飲み物だって、それはそれは勇ましいもんだぞ。
まずは商品名が恐ろしい鮫のポンチ絵になっている 『シャーク』だァ。
お次は鰐がクワッて脅かしつけている『マッドクロック』だァ。
ところで、古事記の『因幡の白兎』に出てくるワニは、いったい鮫なのか鰐なのか、どっちなんだべえ…こちとら山賊なんで海のことは門外漢だで。
コーラだって稲光が物々しい『コーラショックプラス』だァ。
なんたってBCAA配合だ。ありがてェもんだよォ、ホントにねェ…
BCAA…バリンとロイシン…水滸伝にそんな奴がいたような…イソロイシン…あ、ああ、たぶん日本海の柏崎で食べたことがあったべか…確か磯の香りがする料理で…
そんな山賊が食べる物といったらこれに決まってるべ‼
『山賊焼』だァッ!
そんじゃァ少しよばれるべえ。
へェ、ご免なすッとくんなせえ。
そんじゃァまァ名代の山賊焼定食を頂戴すべえ。
ここのは "もも肉" と "むね肉" から選べるだァよ…すんだがねえ、ひとつむねをくんなせえ。
どうだ!えかくデカい肉だんべえ。これァ覚悟ォぶって武者ぶりつかなきゃいかんべえよ。
ガブリッ!…モグモグ…うぅん
やぁ、やっぱりジュ~シ~だなァ。こんだな大きさでも、まっと食べたくなるうまさだぞ。
山賊は人から物を
「取り上げる」
から
「鶏揚げる」
で山賊焼だっちゅうんだと。
うっふふ、こらァ傑作だべえ。
世の中には人から物を取り上げる怪しからん奴ばらは大勢いるけんど、山賊の持つ荒々しいイメージと豪快な鳥の唐揚げはなんだかピッタリだべ。
まったく山賊、様様だな。ハッハッハッ
ん?メールさこかれてきたべ…
傘が直っただか!
はァ、ありがてえもんだねェ…こんなにへえ…どこ修理したかわかんねえくらいだ。こらァ安くなかんべえなァ…これ修理費どれくれえ…
えっ⁉そんな値段でいいだか⁉うぅん…
こらァ世の中捨てたもんじゃなかんべえ。
というわけで
山賊なんて止して、里に下りてきただよ!
エナジードリンクなんて止して、さっそくタピるだよ!
でも山賊焼はやめられないだよ~!