赤蝮サンダースのミュージックギフト。
この番組は「エーザイ」「マルエツ」ほか各社の提供でお送りします。
「マムシさん、今日は新潟県弥彦村『彌彦神社』さんにお邪魔しております。マムシさ~ん!」
「♬ "いつか即身成仏のようなジジイみたいに無口な強さで いつかくたばり損ないのババアみたいに可愛い笑顔で~ " …いい歌だよなァ『家族になろうよ』は。ええ?よせよゥ、誰が下町の福山雅治だって?」
「誰も言ってないよ」
「いやいやいやいや~、有利ちゃん。今ね、彌彦神社の境内で結婚式を挙げているのを見てさ、ついつい嬉しくなって美声を聴かせたってワケなんだよ。しかしイイもんだねェ、和装のお式はさ。角隠しなんて、今時あんまりお目にかかれねェもんな。それにしても別嬪さんだよ、花嫁さん。新郎の野郎め、この幸せ者!女たらし!泥棒!出歯亀!」
「神前式だね。どうぞお幸せに」
「しかし驚いたね。有利ちゃんさ、ここの神社の駐車場、朝からいっぱいなんだよな。ちょっと珍しいんじゃねェかな」
「彌彦神社は万葉集にも登場する、たいへん由緒ある古社だね。新潟県随一のパワースポットとしても、今じゃ大人気だと聞いているよ」
「日頃から俺は『隅に置けないひと』『席の真ん中にいらして』『ずいぶんご無沙汰ね、憎いマムちゃん』なんてキャバレーじゃ言われているけどさ、ここは仕方ねえな、ガマンして駐車場の隅に停めることにしたよ」
「やあやあやあ、さすがは越後国一宮だ。境内に入るとガラッと雰囲気が変わるんだから。空気が凛としているね。参拝者も多いねえ。そこのお父さん、彌彦にはよく来るの?」
「こらっ‼『おやひこさま』と呼ばんか!」
「あらららら、怒られちゃったよ。悪かった悪かった。お父さん、ここいらじゃァなんだ、みんな彌彦神社のことを『さま』付けで呼でるのかい?」
「小さな子どもだってそう呼んで、ちゃんと敬っておる」
「ふ~ん、弥彦の人たちはまた信心深いんだな。いやどうも、感心しちゃったよ。そうだそうだ、やっぱり日本人はこうでなくちゃな。お父さんもこれからお参りかい?」
「いえ、隣の弥彦競輪場に向かっております」
「ちっとも信心深くねェなこのジジイ‼ いわき平競輪場のマスコットキャラクター『リュウ君』みたいな邪悪な顔しやがって。しょ~がねェな~。まあ、境内の中に開設されている公営競技場だ、ご利益があればいいな。勝負事はホドホドにして、長生きしろよ」
「こりゃあ、なるほど北越鎮護の拝殿だ。納得の威容だな。自然との調和が素晴らしいよ。いやはや惚れ惚れするねぇ。じゃあ早速お参りさせて貰うとするか」
「マムシさん。ここの参拝方法は一般的な "二礼二拍手一礼" ではなく "二礼四拍手一礼" だから気をつけて」
「そうだったな。よし…え~神様、東京から古マムシが来ましたぜ…神仏は尊ぶべし、頼むべからずなんて言うけどよ、俺は頼んじゃう…どうか『ウルトラマントリガー』に出演できますように…」
「いったい何役で出るつもりなのよ、マムシさん」
「地球平和同盟TPU日本支部浅草班の隊員として…」
「地球規模なのに随分とこまかい組織だねぇ」
「有利ちゃんさ、神社の周辺には宿場町として温泉街も広がっていてさ、参拝客にとっちゃこいつァ賑やかで嬉しいと思うな。お土産だって目白押しだしなァ。本当に見どころの宝庫だね、ここは」
「弥彦といえば『るろうに剣心』に出てくる少年 "明神弥彦"。その名前の由来になった地でもあるよね」
「るろ…剣…なんだって?」
「少年ジャンプに掲載されていた漫画だよ」
「なんだよ、ポンチ絵かよ。手塚治虫先生や横山光輝先生とかじゃないんだろう?まったく興味ねえやな。そんなもの読むくらいなら、俺の書いた本を読めってんだよ。よっぽどタメになるぜ。さあ、これ以上遊んでやる時間はねえ。お土産を買いにさっさと行こうぜ。所詮この世は弱肉強食。こんなに楽しいのは幕末以来だ」
「門前にある御菓子処『米納津屋』さんに入ろうか。よぅ、こりゃあ雰囲気のある店構えだねえ」
「米納津屋さんには有名なお菓子が置いてあるよね」
「へ~、なんていう菓子だい?」
「越の銘菓『雲がくれ』。TVドラマの『下町ロケット』に出てきた事もあるよ」
「『雲がくれ』…ふ~ん、こいつァなかなか洒落た名前だな。粋な女将でも居てさ、名付けたのかもしれねえよな。今日は会えるかしら。でもよ、東京からあんまりイイ男が来たってんでビックリして、ホントに雲隠れしなけりゃいいけどなァ、ガハハ!」
「マムシさんも、昔は雲隠れした口なんじゃないの」
「そうそう、俺なんかよく家財道具まとめて闇夜に乗じて抜き足差し足…って、よせよオイッ!それじゃあ夜逃げだよ」
「さ入店しよう」
「他の客もたくさん居るな。やあやあ、お母さん。あなたも『雲がくれ』買いにきたの?」
「ええ、少々、手土産に」
「そうかいそうかい。こいつはどんな菓子なんだい。教えてくれる?俺は初めてなんだよ」
「まずはサクサク」
「ほ~」
「中フワフワ」
「なるほど」
「でジュワジュワ」
「ふ~ん」
「トロトロ」
「あぁ…」
「ゴゴゴ、ギャギャ~ン」
「ジャンプのバトル漫画を朗読してるみてえなババアだな‼ 擬音語ばかりでちっとも情報が入って来ねえよ!大阪府熊取町のマスコットキャラクター『ジャンプ君』みてえな無感情な瞳しやがって。しょ~がねェな~。まァ、美味いってのはなんとなく伝わったよ。甘いもんはホドホドにして、長生きしろよ」
「それじゃあマムシさん、曲に行こう。大乃国&渚ひろみで『博多中州は恋の町』」
「スイーツ親方の歌だな。恋の町って、こりゃまいったな。甘いのもホドホドに頼むぜ」
「いやいやいやいや、良かったねえ、彌彦神社。日本一と言われる『菊祭り』の開催時期に、是非ともまた来たいもんだよな」
「マムシさん、今日はもうこれで東京に帰ってくるの?」
「おいおい、有利ちゃん。『のどぐろ』『くちぼそ』『南蛮えび』…せっかく美味いモンだらけの新潟にいるんだぜ。決まってんだろ」
「日本海相手に海産物の国盗りだ」