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ドカッとドコ行こう

略して ドカドコ!

【コンビニロマン】富山『立山サンダーバード』

金曜の夜、ダチとケンカをした。

しかし、あんなイヤな野郎ってないね。

今までよくあんな奴を、親友だなんて思っていたもんだよ。

f:id:inakakaoru:20210601222304p:plainイライラした時は、メシをたらふく食べてストレス発散するに限る。

翌朝目覚めても憤懣やるかたなかった俺は、久しぶりにコンビニ『ポプラ』の弁当、通称「ポプ弁」を食べようとバイクに飛び乗った。

なんたってポプ弁のご飯はホカホカの店炊き。大盛は350グラム、特盛はなんと450グラムなんだぜ。

f:id:inakakaoru:20210601221934p:plainところが、一体全体どうなっているんだ。

コンビニに着くと、そこはポプラじゃなくローソンだった。

からあげクンも美味いが、俺はポプラの唐揚げ弁当(唐揚げ×10)を食べたいんだ。

f:id:inakakaoru:20210601222042p:plainここ、富山県黒部市宇奈月温泉には、確かに俺たちのポプラがあったハズなんだ。

f:id:inakakaoru:20210601222128p:plainそれがマチのほっとステーションになっているじゃないか。

「ほっと発見」「ほっとうれしい」「ほっとやさしい」

今の俺には全て似つかわしくない言葉だ。

俺は今、バチバチに尖っているんだ。

f:id:inakakaoru:20210601223030p:plainあの駐車する客たちの視線と排気ガスに悩まされながら、弁当を掻っ込んだ店の前のイートインコーナーも…

f:id:inakakaoru:20210606060655p:plainすっかり撤去されていた。

なにもかもが懐かしい。

朝はまだ早い。

俺は夢でも見ているんじゃないのか。


f:id:inakakaoru:20210601223448p:plain携帯で調べると、2021年3月に富山県からポプラは撤退していた。

売店舗網と人員のスリム化…収益を上げやすい体制の立て直し…

言っている事はわかる。

不意にダチの顔が浮かんだ。

確かに、昨日アイツの言っていた事も正論だった。だが、それだけで構成されているほど、世の中って単純じゃないだろう?

f:id:inakakaoru:20210601223833p:plainやにわに立ち上がり、俺は宇奈月駅をノホホンと利用している連中に対し

「アンタたちがポプラを失ったって事は、単純にコンビニが変わったって事だけじゃないんだぜ!」

と叫んだ。

心の中で。

再びバイクに跨り、走り出す。

暗澹とした気持ちがバイクに影響したか、以前に乗ったラビット125くらいに出足が遅く感じられるのが不思議だった。

 

f:id:inakakaoru:20210601223959p:plainポプラは俺たちのもとを去ってしまったが、 富山にはまだコイツがいる。

f:id:inakakaoru:20210601231527p:plain富山県立山町にあるコンビニ立山サンダーバードだ。

開店は1996年。

開業25年といえば、コンビニ界では老舗になるのかどうなのか、俺はよく判らない。

f:id:inakakaoru:20210606074137p:plain開店した数年後に大手コンビニチェーンが近くに出店する事態となり、ならばと個人経営ならではの独自性へと豪快に舵を切った、フロンティア精神旺盛なローカルコンビニだ。

その独自性は、昔も今も俺たちの心を魅了して止まない。

見てくれ。

そんなに需要があるとは到底思えないキリン『力水』に対しても、勝手にこの力の入れようだ。

因みに俺は、ビンの時の方が好きだった。

f:id:inakakaoru:20210601231855p:plain何気に洋モクの品揃えが県内屈指だったり、一般家庭じゃあまり使わないと思う調味料が豊富に売っていたりと、独断と偏見がハンパない。

「あなたと、コンビに、」だの「近くて便利」だの寝言は寝て言え。POSシステムなんて味噌汁で顔を洗って出直してこい状態だ。

中でも異彩を放っているのが

f:id:inakakaoru:20210601232005p:plain店内で作られている「おにぎり」と「サンドイッチ」だ。

おにぎりは『さけ』や『たらこ』など、普通のコンビニにだってある商品もラインナップされているが、そんなのここではオマケだ。

『かも』『うさぎ』『いのしし』…まるで遥か太古の、狩猟時代の日本に戻ってしまったかと思うばかりの品揃えだ。

f:id:inakakaoru:20210601232046p:plainほたるいか」「くま」…どいつもこいつも安易に手が出せない。味が想像できないからな。

本当に俺たちが知っている、あの身近で手軽なコンビニというカテゴリーの店なのか疑ってしまう。

f:id:inakakaoru:20210601232213p:plainとりあえず『うましか』おにぎりを購入した。

たぶん具は「馬肉」と「鹿肉」だろう。それらの肉なら過去に何度も口にしている。あまり一緒に食べた事はないが。

書品名が漢字表記でなくて良かった。

f:id:inakakaoru:20210601232237p:plainなんとなく甘ったるい味付けを想像していたが、香辛料がしっかり効いていてスパイシーで美味い。

一口目は恐る恐るだったが、その後はペロリだ。

f:id:inakakaoru:20210601232535p:plainサンドイッチも一筋縄じゃいかない。

「たこやき」だの「おでん」だのをサンドした、只者じゃないヤツらが雁首揃えている。例えるなら、2001年の近鉄 "いてまえ打線" の破壊力だ。

f:id:inakakaoru:20210601232649p:plain悩み抜いた結果、今回は『しいたけハンバーグ』を購入した。

f:id:inakakaoru:20210601232722p:plain肉厚プリプリでしっかり歯を押し返す椎茸が、ハンバーグと口の中で混然一体となりうま…

少し安牌なサンドイッチを選んだんじゃないかって?

冗談じゃないぜ。

f:id:inakakaoru:20210601233021p:plain俺は店に入る前、店先に無造作に置いてあるこの椎茸の原木を見逃さなかった。つまりサンダーバードは、椎茸もシコシコと栽培しているということだ。

もはやコンビニという範疇から逸脱している…こうなったら食べるしかないだろう?

f:id:inakakaoru:20210601232806p:plainそしてデザートはこの『きのたけ』サンドイッチだ。

f:id:inakakaoru:20210601232837p:plain「きのこたけのこサンド」

そう、なんとあの明治チョコスナックきのこの山と、同じくたけのこの里がクリームと一緒にサンドされているのだ。

味は想像していた通り…ではなく、「きのこ」も「たけのこ」もすっかり湿気ってしまい、それが逆にソフトな食感とパンとクリームとの一体感を誘い、なんだか上品で美味い。

f:id:inakakaoru:20210601232901p:plainこの菓子たちが長く続けている「きのこたけのこ戦争」といえば、世界の紛争や内戦の中でも激しい争いで有名だが、ここ富山で終戦を…いや、すでに共生を初めているというこの事実を、もっと世に広く伝播した方がいいのではないかと俺は思う。

またダチの事を思い出した。

f:id:inakakaoru:20210601231733p:plainアイツがきのこで、俺がたけのこ。 

ぶつかり合い、だが何処かでお互いのことをリスペクトしている姿も、まるで同じだ。

フフフ…サンダーバードに教えて貰ったな。

最後の一口となった『きのたけサンド』を勢いよく口に放り込む。

夕方にでもアイツに電話をしようと決め、俺はバイクのエンジンをかけた。

 

f:id:inakakaoru:20210607224628j:plain
なんて事を、セブンイレブンブリトー食べながら書いている。

コンビニの食べ物の中で、俺はブリトーが一番好きなんだ。

まったく、世の中って単純じゃないだろう?

【官能252号線】桃と松茸『六十里越』峠の先で

 

f:id:inakakaoru:20210522235004p:plain2021年も無事に、新潟県福島県をつなぐ『雪わり街道』が開通したのでございます。

また開き、通ずるとの知らせを耳にした刹那、体の奥に火照りを感じてしまったことを春の陽気のせいにしたところで、アナタは信じてはくれないのでしょうね。

f:id:inakakaoru:20210522235046p:plainXRに跨り、ハンドルをそっと握りしめ、波のように押し寄せる鼓動に身を任せます。

シリンダーの中をピストンが激しく上下し、単気筒は私めの下で荒ぶり唸りをあげるのでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235140p:plainここは只見線、大きな白い川と書いて大白川駅でございます。

只見線は福島会津若松から新潟魚沼をつなぐ鉄道路線。1,000m級の山々を抜ける間に設けられたトンネルの数は10本。様々な穴をじっくりとご賞味いただければと存じます。

 

・六十里越峠

f:id:inakakaoru:20210522235318p:plain今日は国道252号線、再開通した雪わり街道『六十里越(ろくじゅうりごえ)』峠を抜きます。

ずっとつながっていたくとも、国内有数の豪雪地帯であり雪崩注意の落石注意、毎年11月から5月にかけては通行止めとなり、半年間のおあずけ状態を強いては身も心も弄ぶ、それはそれは罪づくりな国道なのでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235336p:plain眼下に望む田子倉湖は、今日もマンゝと水を湛えているのでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235423p:plain峠は福島県側でも急勾配とカーブが続きます。

人生は九十九折。転がり、堕ちていく事へも時に人は惹かれ、魅せられてしまいます。これぞ生の不思議、浮世の妙味というものでございましょうか。

水は低い所に流れるといいますが、人も同じ。 人体の60%は水で出来ているといいますもの。

f:id:inakakaoru:20210522235442p:plain至るところで、雪解け水が道に流れ込んでいます。

この時期の雪わり街道をバイクで走れば、はしたないと言われようと下半身がしとどに濡れてしまうのでございます。

 

田子倉ダム

f:id:inakakaoru:20210529205728p:plain田子倉ダムにたどり着くと、黒色を基調とした巨大なバイクを駆り、全身レザーで身を包んだ黒光りする男たちが集結しています。

黒光り男たちは皆ビッグツインのバイブレーションに当てられ、朝だというのに恍惚とした表情で缶コーヒーを飲んでいます。その横で慎ましく伊藤園の大納言しるこを口にする私めでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235728p:plain田子倉ダムは、高さ145mの重力式コンクリートダムでございます。

総貯水量は全国第3位。

この否応もなく押しとどめられた大量の水どもの、放出や迸りへの衝動や欲望、深いデザイアへ頼まれもしないのに勝手に思いを馳せ、一人ダムの上で身悶えをするのでございます。あゝ…

黒光り男たちが心配そうにこちらを見ています。どうぞ、どうぞ放っておいてくださいまし。

f:id:inakakaoru:20210522235746p:plain多くの流木や芥が、流れ流れてダム湖に集まってきます。

川の流れに身を占って 何処をねぐらの今日のダム

荒む心でいるのじゃないが こんな芥に誰がした

ただ運命に翻弄され流れついたもの達を、船乗りの男たちが各々の逞しい棒で寄ってたかって突いているのを、今は上から見ているしかないのでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235908p:plainここは水力発電所としては日本第2位の出力を誇ります。

遠く首都圏まで電力供給を行っていますが、この自然豊かな田舎から、都会に行った電力たちはどのように扱われているのか…

寒い夜、夜汽車に揺られ上京していったあの娘はどうしているのか…

知る由もないし、知るつもりもないのでございます。

f:id:inakakaoru:20210522235956p:plain天を衝けとばかり立派にそそり立つ田子倉ダムを、残念ながら下から仰ぎ見ることは叶いません。

「立入禁止」

ならば座って入らんとする一休さん的打開策も、桔梗屋や将軍義満公以外には通用しないのでございます。

 

・道の駅尾瀬街道『みしま宿』

f:id:inakakaoru:20210523000659p:plain会津にも、新緑の季節到来でございます。

可愛いらしいイヌノフグリも咲きみだれていることでしょう。

f:id:inakakaoru:20210523000126p:plain福島県三島町でございます。

この町にはガソリンスタンドが一店舗しかなく、数年前に訪れた際に

「フ~、初夏やちゅうのにこう暑くちゃたまらんなぁ。これが地球温暖化か。クソ~なんや知らんトランプのヤツ、町であったらどついたる。しかしリッター空冷はまるで走る股火鉢やど。環境破壊の前にワシの股間が破壊されそう。もうアカン~。あ、おばちゃん、ハイオク満タンで。奥までグッとたのんます」

と慣れない土地のため少し緊張しながら給油をお願いすると、レギュラーしか扱っていないので隣の柳津町まで行ってくれと言われ、思わずビックリ クリクリ クリックリしてしまった覚えがあります。

そのスタンドも2020年には廃業。現在は町が出資する農業法人が経営を担っているというのですから諸行無常、ただ春の夜の夢のごとしなのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000225p:plain道の駅尾瀬街道『みしま宿』でございます。

ここまで伊藤園大納言しるこしか口にしていないものですから恥ずかしながら私め、飢えでギラギラしているのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000333p:plain店舗内に入る際などに、マスクを着け忘れることはなくなりました。

すっかり習慣化したのでしょう。むしろ外していない事にはたと気づくことが多いくらいでございます。

パートナーと熱いベーゼを交わせる際に、マスクを外し忘れていたと気づく方々もいるのではないでしょうか。

因みに私めも最近、キャラメルコーンを食べようと口に放り込むと、マスクをしていて弾かれた事がありました。お茶目でございます。

 

・官能の福島

f:id:inakakaoru:20210523000410p:plain店内の一角で、ひときわ目立つ鮮やかな桃色。

『福島 桃の恵み』でございます。

「桃の果汁100%」

「ストレート」

あゝ…この挑発的な文字。

ショッキングピンクの缶へ手を伸ばしながら、濃い原液を飲み下せるのか不安と期待が入り交じり、思わず吐息が漏れてしまうのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000430p:plainレジ横には松茸おにぎりが山と積まれています。

熊本県天草の春松茸は日本一の早採りと聞き及んでいましたが、この時期の福島で松茸を目にするとは…

松茸のあのなんとも言えぬ蠱惑的なシルエットを思い浮かべながら、ワンパックを手にレジに向かうのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000515p:plain桃と松茸の揃い踏みでございます。

あのプリンとした割れ目も愛らしい桃と、隆々とした松茸が…モグモグ…あゝ、口中で見事に結合したのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000835p:plainこの両者の一時の逢瀬にあって

「食事として桃ジュースとご飯は果たして合うのか」

などという者がいるのなら、これは大変な野暮天。まるで木石、石頭。石崎君の顔面ブロックなのでございます。

f:id:inakakaoru:20210523000243p:plain「ようこそ会津へ」

あったのでございます。まだ、極上の日本が…旅先のアバンチュールがここ、会津に。

お越しの際はぜひバイクで。会津路の自然や空気感を、あまねく全身で堪能できますのでお勧めでございます。

そしてあなたのパートナーはきっと言うでしょう…

また、いきたいと。