「じっとコチラを見ていますな…」
「せ、先生、どうしたらいいんでしょうか…」
・マシュマロ専門店『やわはだ』
「ほう…これが今回の依頼品ですな」
「はい…『Cafe Cat&Paw』いいまして…」
「&ポォー…なるほど、故マイケル・ジャクソン氏と何か縁のある」
「いえ多分ないと…これはマシュマロ専門店『やわはだ』の商品になりまして」
「やわはだ…アナタ、これは一体どこで手に入れたのですかな?」
「はい、長野県飯山市にある道の駅『花の駅千曲川』で購入しました」
「ほお…花の駅の道の駅千曲川」
「いえ、道の駅の花の駅千曲川で」
「ほほう…花の駅千曲道」
「いえ、花の駅千曲川」
「なるほど…川の駅道の花」
「もうどっちでもいいですわ」
「それで、蓋を開けたら驚いたというワケですな」
「そうなんです。確かに私、マシュマロを買ったはずなんですけど、開けてみたら可愛いらしいネコの顔やらプニプニの肉球やらがぎっしりと中に…」
「ふ~む…いや、わかりました」
「先生…これは一体…」
「これは…『念』ですな」
「ね、念ですか?」
「強力なネコの念がマシュマロに乗り移っている」
「ネコの念がマシュマロに⁉」
「それでは、同じく花の駅千曲川で買った、この『SHIBA』にも…」
「左様…間違いない」
「イヌの念ですな」
「イヌまで⁉ し、しかし先生…一体なんでネコやイヌの念が…私の買ったマシュマロに…」
「それを突き止めるには、ひとつ "サイコメトリー" を行う必要がある」
「"サイコメトリー" というと、『物体に残る残留思念を読み取る』という、あの超能力の…」
「その通り。私は何と言っても寺生まれなので、生まれながらにして超常の力を身につけている。さ、私の手を握って……キャッ‼ 指を絡ませる恋人つなぎをするヤツがどこにおる!」
「あ、つい…えらいスンマセン」
「判ればよろしい。ではアナタの中にある残留思念を、私の心の中に念写してみるとしよう…ウムムムム…なむ三界の万霊、八百万の神々、我に力を貸したまえ…テンメイテンメイ…カノウテンメイ…エイ、エイ、エーイッ!」
「……」
「先生…ど、どうですか?」
「赤い…赤いバイクが見える…」
「あ、赤いバイクなら私、乗ってます。最近は新潟の長岡市に行ってきました」
「その向こう…その向こう側に強力な念を感じる…」
「動物たちの顔が見える…いや、むしろコッチを見ている…」
「動物たちが見ている⁉」
「一匹一匹がなんという眼力…ウ~ム、これはスゴイ念だ…このネコとイヌだ…」
「ネコとイヌ⁉」
「せ、先生!そのネコとイヌはこんな風な…」
「こんな風な、可愛らしい顔をしてるというんですか⁉」
「……」
「ソックリだ」
「ホントですか⁉」
・老舗ペットショップ『松田ペット』
「しかし先生、なんでそんな強い念が私に…」
「心当たりはないですかな。大きな建物…動物がたくさん居るような場所も見えたが」
「動物がたくさん居る…あッ!」
「私、『松ぺ』の本店に行ってきました」
「松ぺ?」
「 長岡市にあるペットショップの老舗『松田ペット』店ですわ」
「ふむ、それに違いないようですな」
「そ、そうか…松田ペットの動物たちの念が、私に憑いてきてしまったと…」
「いや。動物たちは快適に過ごしているので関係はない」
「えっ?」
「看板の絵の念ですな」
「看板の絵⁉ 絵の念ですか⁉」
「強力な念を持つ看板の絵が、その前を通ったアナタへ知らず知らずに影響を及ぼしていたのですな」
「い、いったいどんな看板なんや…改めて見に行きたいような行きたくないような…しかし先生、私はこれから一体どうすれば…」
「私に万事任せなさい。何といっても寺生まれですからな、超常現象のプロなので、タイタニックのような大船に乗った気持ちで、ドーンと構えていて結構ですぞ」
「タイタニックは最終的に沈んだような…」
「さあ、私に続いて真言を唱えるように。いいですかな。『健康なくして叶う夢なし』‼」
「は、はいっ。健康なくして叶う夢なし!」
「リピートアフタミー。健康なくして叶う夢なし‼」
「け、健康なくして叶う夢なし!」
「二階席、聞こえないよ~っ‼ 健康なくして叶う夢なし‼」
「健康なくして叶う夢なし!」
「アリ~ナ~‼」
「アリーナってなんやねん」
「あっ!先生、ネコが…ネコが消えて…消えていきます!」
「念が昇天していくところですな…ナンマンダブナンマンダブ…」
「ああ…なんだか『ターミネーター2』でT-800が溶鉱炉に消えていくシーンのような…」
「ガンズの『ユー・クッド・ビー・マイン』は殺気があっていい曲でしたな」
「ふむ、こうなればもう一安心。いやはや、よかったよかった」
「先生、ホンマにありがとうございます。これで日常の生活に戻れます」
「なんのなんの。せいぜい稼ぎなされ」
「いや~先生、ボチボチですわ」
「ハハハ」
「ハハハ」
~END~
"アイルビーバック…"
「えっ⁉」
「えっ⁉」