前略。
カヲルちゃん、元気?
私、また元気じゃないの。
できるなら大学の頃に戻りたい。
五月病っていうのかな…え?もう六月になってる?ヤだなモ~、五月病って名前の病気だよ。なんにも知らないんだから。でね、私その五月病とやらになっちゃったの。
そう、社会人になって環境変化にうまく対応できなくて…繊細でバリケードじゃない、私って。
え?デリケート?
そう言いましたけど?
だから気分転換が必要だと思って、山梨県の『小淵沢駅』ってところに行ってみたんだ。
山梨県の最西端の駅だっていうくらいだから、都会の喧騒から離れられそうで、なんかイイ感じでしょ。
小淵沢は東京と違って、メチャ空気が美味しいんだよ。駅のホームに降り立った瞬間、「生き返ったー」というか「なんか体に良さそうー」っていうか、ほら、よく聞くじゃん、"命の選択" っていうヤツ?
健康でピチピチした命でいるか、炎天下のなか歩いて汗びっしょりになって脱ぎ捨てたTシャツみたいなヨレヨレの命でいるか、どっちか選べってコトだよね、選択って。どうせ選ぶならピチピチの方がいいじゃん。ねえ。
でもさすが名前に山がついてる山梨県だけあって、本当に山が近いんだよ~。もう見渡す限り山。360℃山。っていうか山の中。山中鹿之助だよ。
そうそう、山といえば、カヲルちゃんが前に「ヤッホー!」なんて送ってきてくれた写真だけど
あれ、マジ山中じゃん。
いったいドコ走ってるのよ。
でね、小淵沢は "馬のまち" でも有名なんだ。
山梨出身の武田なんとかっていうオジサンも、戦国時代最強の騎馬軍団を率いていた事は有名だもんね。え?知らない?そのあと大陸に渡ってチンギスハンって名乗って、モンゴル騎馬軍団を作ったっていう伝説もあるんだから、ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジこと朝青龍もビックリって感じだよね。
お馬さんに乗って駆け抜けられたら、すっごく気持ちいいんだろうな。いいな~。乗馬、習おうかな…ラジオNIKKEIで中央競馬実況なんて聞いている場合じゃないよね。
カヲルちゃんは大きいバイクにも乗ってるけど、気持ちイイからって高速道路や見通しの良い道で、スピード出し過ぎないようにね。
大きいのでも山の中ばかり走ってるじゃん。
いったい行先はドコなのよ。
そんな自然豊かな小淵沢の駅舎は、予想外の近代的建築なんだよ。それでいてちゃんと内外装に木を多用しているエコステーションなんだから。ステキ~。
ちょっとでもマインクラフトみたいとか、美味しそうな羊羹なんて思ったら恥ずかしいんだからね。
昔から言うじゃん、"腹が減ってはアレクサ出来ず" って。そりゃあ、お腹ペコペコの蚊が鳴くような声で話しかけられたって、アレクサ聞き返してくるもんね。
ということで、小淵沢で食事をしようと思ったら、絶対にチェックしなけれないけないモノがあるの。
それが "駅弁"。
小淵沢には『丸政』っていう創業大正7年の老舗駅弁業者さんがあって、駅には直営店の『MASAICHI』が入っているんだ。
とにかく駅弁のラインナップが豊富なんだから。スゴイんだよ~。
2005年の阪神のラインナップくらい、粒ぞろいの顔ぶれにワクワクしちゃう。
元気ですかーッ!
ということで30年以上前にテレビの企画で爆誕し、駅弁なのに高級料亭の味を楽しめることで長く愛されている『元気甲斐』と
日本のワイン生誕地山梨ならではの『ワインのめし』を購入してみたんだ。
このワインのめし、包装紙のイラストがチョ~可愛いの。みんなニコニコ生き生きしてる。富士山でしょ、山梨の自然に育まれた動物や野菜たちでしょ、たぶん武田のオジサンでしょ、…ん?これは…鍋?
そして忘れちゃいけないのが、日本で唯一『お茶土瓶』いわゆる "汽車土瓶" を、ここの駅で売っているってコト。
ペットボトルの『お~いお茶』や『お~い午後の紅茶無糖』『お~いジャワティ』なんてない頃は、土瓶に飲み物を入れて持ち運んでいたんだよね。風情と不便のダブルFって感じ~。
購入すると土瓶にお茶のパックを入れて、店員さんがお湯を注いでくれるんだよ。
空でも買うことは出来るけど、モチのロンで熱湯を入れて貰ったよ。アチアチとワクワクで、二つの意味で激アツなんだから。
そういえばカヲルちゃんは、以前から駅弁とツーリングは似ているなんて謎理論を唱えていたよね。
確か駅弁の楽しみは「車窓から流れる風景を眺めながら食べる事を想像して買うまでが8割。食べるのが2割」でツーリングの楽しみは「行程や走る風景を想像しながら準備するまでが8割。乗ってるのが2割」だったっけ。
なんか判りみが深い~。
でも元気甲斐を食べる楽しみは、2割どころじゃおさまらないよ。
旅のハイライトが駅弁になったって、ちっともおかしくない美味しさなんだから。
「"経木折詰二段重ね" 一の重と二の重に満載された山梨の自然の恵み」…どう?言葉の意味はよく判らないけど、なんだか迫力あるでしょ~。
胡桃ごはんや栗としめしのおこわもよく炊けてあるし、おかずも一つ一つ素材の味がしっかり判る味付けで、料亭の味付けだけど思わず無作法にモリモリいっちゃう。
ワインのめしは、"ワインに合うめし" ってコトだったんだね。
シャレオツ~。
このカボチャが入ってる一品は、ほうとう鍋のグラタンだそう。美味しい~。
ふ~ん、ほうとう鍋かぁ…ほうとう…鍋?鍋っていったら、あのパッケージのイラストのヤツ?アイツか~。
ごちそうさまでしたー。
ほんに、たいへん美味しゅうございました。
(シーハーシーハー)
ありがとう丸政。ありがとう小淵沢。そして山梨の山々。
元気、いっぱい貰いました。
五月病なんか吹っ飛んじゃったんだから。
昔を振り返って、しょげてなんていられないね。
前を向いて、進まなくちゃ。
ね、カヲルちゃん。
…?
ドンマイ!カヲルちゃん。
またね‼