やかんをバイクに括りつけて…
これでヨシッ!
時刻は午前5時。ここは約束の場所、長野県高山村のコンビニ前です。
まだ薄暗い朝ぼらけに乗りつけたのは、私がXR230。バイクパイセンこと荒川さんがFTR223。早朝の冷気のなか県道112号を走り抜け、長野県と群馬県をまたぐ毛無峠まで行き朝ラー(カップラーメン)を食べようというワケなのです。
「予報じゃ朝方は雨でしたが、イイお天気になりそうですね、荒川さん」
「きっとカヲルくんの日頃の行いが良いからだろうね」
「そんなことないですよ、止めてくださいよ~。も~、でもよく言われます」
「ハハハ」
・急行毛無峠
山の冷気の中、大前須坂線(県道112号線)を駆け抜けます。
さすがに早朝、私たち以外は車もバイクも走っていません。
「気持ちイイですね~、荒川さん。よーし、このまま毛無峠までノンストップでいきますよ~!」
「了解したよ」
キキーッ!
「ちょっと待ってください荒川さん!」
「どうかしたかい?」
「やかんが落ちそうなんです。位置を微調整させてください!」
「それは大変だ」
朝食のカップラーメン用に、荒川さんはバーナーを、私はやかんを持参してきたのでした。
「…これでよし。さあ、行きましょう!」
「慌てずにね」
「毛無峠は右と…」
キキーッ!
「ちょっと待ってください荒川さん!」
「どうかしたかい?」
「標識の写真を撮りたいんで一旦戻りましょう!」
「記録も大切だね」
「目の前に毛無峠が見えてきましたよ!なんだか気が急いちゃうなあ」
「ハハハ、慌てなくても峠は逃げないよ」
キキーッ!
「ちょっと待ってください荒川さん!」
「今度はなんだい?」
「やかんの微調整を…」
「手伝おうかい?」
「荒川さん、道が荒れてきましたよ! 注意してついて来て下さい!」
「もちろんだ」
ドババババッ!
未舗装路になりましたが、構わず突入です!
それにしても土が赤い。痩せた酸性土ですね~。
ズザザザザー!
キキーッ!
「ちょっと待ってください荒川さん!」
「今度という今度はなんだい?」
「着きましたよ!!」
「だね」
・ネットで有名なあの看板
毛無峠の例の看板の前です。
風雨に晒され劣化が多分に見受けられますが、群馬県の文字が確認できますね。
荒涼とした風景と相まって、もはや一幅の絵です。
「県をまたいでの往来はご遠慮ください」どころか、この先は立ち入り禁止区域なのです。
眼下に見えるのは、廃坑となった小串硫黄鉱山跡です。鉱山最盛期の硫黄採掘量は堂々の全国2位。2,000人以上の人たちが住み小学校や中学校、スーパーマーケットや遊園地もあった鉱山の町が存在していたというのですが…
ホントにあったの⁉ このスーパー山奥に!
昭和46年に閉山となり繁栄した町から人々は消え、空中都市は今やゆっくりと自然に還りつつあります。このまま、そっとしておきましょう。ガイアの物は、ガイアに還るか…
まだまだ早朝ですが、人が集まりだしてきました。
撮影スポットである看板前から、他の人の邪魔にならないようバイクを移動して、さあお待ちかねの朝食です!
・毛無で朝食を
ブルブル…真夏なのに毛無峠の朝は寒いくらい。
熱々のラーメンで体を温めるコトにしましょう。
荒川さんがバーナーをセットします。面白そう…
「なにか手伝うコトはありますか?」
「いや、大丈夫」
「ポンピングやらせ…手伝わせてください!」
シュコシュコシュコシュコシュコココ…
「カヲルくん、それくらい…それくらいにしておこう」
「ギャー!荒川さん、火事です、火事‼ ファイヤー!」
「10秒くらいで炎が安定するから落ち着いて」
ジャ~ン!
私が大事に持って来たやかんの雄姿をご覧ください。水を入れると安定感がグッと増し、動かざること山の如しです。
カップラーメンは私のチョイス。
「どうです荒川さん、山なのに海鮮なんて…プププ」
「ハハハ、面白いね」
「気圧が下がれば沸騰点も下がるといいますからね。ここ毛無峠は標高16,00mほどですから、沸点は95℃くらいかしら。どれどれ…熱い!」
「ん?今、僕のラーメンに指を入れていなかったかい?」
「荒川さん、付属のふりかけを忘れていますよ。そのままエースコック『MEGAにぼ』を持っていてください。今、入れてあげますからね…」
サラサラ~
ビューッ!
「風が!風がスゴイ!」
「強風で3分1くらい飛んで行ってしまったけど…うん、ありがとう」
スープは捨てられないので、もちろん完飲です!ゲップ
「さあ、下界に帰るとしましょう」
「そうするとしよう」
キキーッ!
「ちょっと待ってください荒川さん!」
「やかんの微調整を…」