一番重要なのは君たち全員が無事に還ることだ。それを忘れるな。だが、行けそうなら頂上を狙え。
(ジョン・ハント)
なんという断崖絶壁。
この切り立ち具合…これは…
危険だっ!
・そそり立つ岩山へのアタック
この岩山の上に、奈良時代より続く古刹が、それも空中に浮く様に存在するというのだ…。
本当なのか⁉
確かめるべく麓に隊員を集め、我々はアタックを決行した!
またの名を『布引観音』
とても綺麗な名前だが…美しいモノほどいつ牙をむくか判らないぞっ‼
油断するなっ!
険しい道だ…
気を引き締めて行けよ!
足元がぬかるんでいる所もある。
よーし、一人ずつ順番にな。
慎重に行こう。
ところどころに設置された石塔や石仏、石積みなどが否が応でも目を引く。
我々の冒険の無事を祈ってくれているのか…
それとも別の意図があるとでも…
少し休憩をするか。
・栄養補給
いかなる時も周囲の警戒を怠らないようにな。何か食料はないか…なんだ隊員A。なに?バーガーを携行してきただと。
これは悪くないぞ。炭水化物とタンパク質、若干の植物繊維とビタミンを同時に摂取する事ができるな。
『エブリバーガー』
そうそう、箱を開けるとまちがい探しがあってだな…ってオイッ‼
オイオイオイッ!箱を開ける前に何がまちがいか、キサマ判っているな?
遠足じゃないんだぞっ!ダメなんだ、そういうことは…ここがジャングルやアマゾン、アフリカだったら死ぬぞっ!
だが冒険にアクシデントはつきものだ。大切なのは慌てないこと。逆境は人を成長させる。
・蓄積される心身の疲労
「た、隊長ーっ!これを見てください!」
どうした!毒ヘビかっ!サソリかっ!
なんだ、この洞窟は…。
吸血コウモリがいるかもしれないぞ。全身でかすかな気配でも受け止めろ…横か…後ろか…それとも上かっ!
石板…いや、看板に何か書いてあるな。
隊員B、みんなに読んで聞かせてくれ。
「長野市の善光寺まで穴が通じている…」「昔、善光寺火災の折に、この穴から煙が出た…」
なんだと…地底へと通じる道があるというのか…だが、ここから善光寺までどれくらい距離があると思っているんだ!
しかし…少しでも可能性があれば飛び込んでみる。O.K…みんな…
行くぞっ!
こ…これは…
本当に善光寺に続いていた‼ 伝承は本当だったのだっ!
…いや待て…なにか様子が違うぞ…まさか…ここは…
…
ハッ…幻覚かっ⁉
蓄積された疲労と極度の緊張が、心身に変調を起こさせたようだ。
危なかった…。
・伝説が姿を現す
仕切り直しだ。
方位磁石が示す方角は間違っていない。
よーし、出発だ。みんな、気を引き締めてな!
「た、隊長ーっ‼ 岩石がーっ!」
「た、隊長ーっ‼ 丸太がーっ!」
ということは幸いに無く、濡れた岩肌や落ち葉に足を取られないよう細心の注意を払いつつ、我々は一歩一歩確実に前進していった。
「隊長…なにか聞こえま…」
静かにしろっ!
「あの…」
セガサターン、シロ!
…
静寂が辺りを包み込む…
上かっ!
なんだっ⁉
この大自然の中に忽然と現れた壮麗な人口建造物は!
断崖にへばりつくように造られていて、ここから建物に登ることは不可能だ。
くそぅ…このまま道を進むぞ!我々は遂に、聖地の平坦部に辿り着いた。
これから一体どんな展開が待ち受けているというのか…
・危険なる門番
「た、隊長ーっ‼ た、助けてーっ!」
どうしたっ⁉ ピラニアかっ!
なんだ…この猛獣は⁉
高所から、上から目線でこちらの動向を窺っているぞ。
それにしてもなんて目力だ…
確実に急所の喉元を狙っている…こういう時は先に動いた方が殺られてしまう。
顎から汗が滴る…
ガマンくらべだっ!
間近で見た感じはこうだ!
こ~ら恐ろしい形相で威嚇してきたのだ。まるで我々がこの先に行くのを阻むかのように…。
どれくらいそうして対峙いたのだろうか…気が付けば猛獣の姿は目の前から消えていた。
我々は助かったのだ!
・空中楼閣に突入せよ
ムッ⁉ あれはなんだっ!遂に全貌を捉えたぞ!
あれが布引観音が祀られているという社殿だ!なんて神々しい姿なんだ。
しかし、あの宙に浮く社に行くにはどうしたら…
「隊長ーっ‼ こっちに来て下さーいっ!」
どうしたっ⁉ 誰か血清を持ってこいっ!
こんな場所に通路がっ!
これほどの分厚い岩を掘り抜くなんて…携わった人たちのパッションを感じ、恐ろしくなるほどだ。何が人を、このような偉業を成し遂げられるほどに駆り立てるのか…。
本当に素晴らしいな。
我々は目の当たりにした‼ これはまさに空中社殿だ!
オイッ‼ オイオイオイッ!あんなに足元が悪いところで、身を乗り出すように夢中で景色を眺めている男がいるぞ!
これは何者かに魅入られている…。まかり間違えば連れていかれてしまうぞ‼
危険だっ!
社殿に乗り込んだぞ!
なんという壮観な眺めなんだ。
しかし、本堂側から別のアタックチームが、心配そうにこちらを見ている。
なぜなら…
この高さだ。一歩間違えば…危険だっ!
よーし…もっと探検したかったが、時には退く勇気も必要だ。
撤退するぞっ!
冒険とは生きる力!
奥に見える大浅間山もそう言っているようだ。
そうだ 信州、行こう。
みんな、来県の際は気を引き締めてなっ!