霊峰富士は甲斐から見るに限るな!
あ、どうも。武田信玄です。
実は最近…
違う違う!
こっちこっち。こっちの写真使えっていつも言ってるじゃん、信廉。常勝軍団、我が武田家臣団に失敗は許されない。今度やったら黒川金山送りだぞ!まったく…
改めて。どうも、武田信玄です。世間では「甲斐の虎」なんていわれているみたいだけど…そんなに迫力あるかな、オレ…虎って…困っちゃうなぁ
おっとそんな事より、またぞろ信濃の豪族どもがオレの悪口を言っているそうだな。一向に構わないぞ。こっちだって戦国大名を長くやっている身。他人様に恨みの一つや二つ持たれているのは覚悟してる。
しかしだ。あの長谷川等伯が画いた肖像画、あの恰幅が良くて堂々としてて、且つふてぶてしい面構えの肖像画をだ、最近じゃ実は信玄自身じゃないなんて言われ始めたのには我慢ならん!
あの画、気に入ってるのに、オレ。
そしてどうやら
「本当の信玄は痩せっぽっちで神経質で、焼き肉の網の交換を何度も要求して店員を困らせているヤツ」
なんて吹聴して回っているのが、どうも北信濃の連中らしいんだ。
普段は神社でバイトを頑張っているが、 我が武田軍団の諜報部門 "歩き巫女" から聞いたんだから、間違いない!
北信濃の木っ端どもめ~…
・信濃侵攻だ
もう南無八幡大菩薩だぞっ!
昌豊、狼煙を上げよ!
風林火山の旗を掲げよ!
自分ちの『躑躅ヶ崎館』から出陣だ!
…ん?お城じゃなくて館なのかって?戦国大名のくせに?
やれやれ…これだから素人(農民)は困るな…お城なんてただの飾りだぞ。甲斐の自分ちまで攻め込まれるようじゃ、これがホントの甲斐性なしだ。上手い!信廉、座布団一枚持ってきて。
「人は城、人は石垣、人は堀…」
と言ってだな…あ、別に人を物扱いしているワケじゃないから。
我が武田家は大企業だからな。人材はとても大切にしているし、"神24" なんて言われている家臣の中には農民出身者もいるくらいだ。立身出世も夢じゃない。要はハートが大切ってことかな。
や、虎昌。さっそく「赤備え」で準備万端だな。さすがは我が宿老の一人、飯富兵部よ。
だが、リボンとオーバーオールだけとはいくらなんでも軽装過ぎるぞ!北信濃の田舎武者が相手とはいえ、敵を侮ってはならぬ。
あと、お前のあだ名が「甲斐の猛虎」って…オレより強そうじゃん…出来ればやめて!
グビグビ…
グワハハハ‼ 戦国武将風に一息に飲み干してくれたわ!
甲斐産のもも果汁か…これは力が漲るぞ。
それじゃーいくぞー!2階席も聞こえるか~⁉
「エイ!エイ!オー!」
・一大事発生だ
今回は "佐久甲州街道" から軍勢5,000で信濃に雪崩れ込み、甲州盆地とは違い夏でも比較的にカラッと涼しく快適に過ごしている不届きな北信濃の連中に、目にもの見せてくれるわ!
ドドドドド!(騎馬軍団移動中)
ム⁉なんだ昌豊。
「お館様!一大事でござる‼」
ってなに?えっ?なに?なにごと?
し…信玄ソフトだとっ⁉
こ、このオレがソフト…戦国の奸雄としてむしろハードで売っているこのオレが…一体どういうことなんだ。確かめるぞ。
店主、この店に5,000の軍勢で入店することは出来るか?出来ないか、そうか。まあいい、入るぞ!
こ…これは、甲州銘菓『信玄餅』とソフトクリームをコラボした逸品。
この組み合わせ…最強ぞ!
例えるなら
「オレと騎馬軍団」
「オレと赤の甲冑コーデ」
「オレと中井貴一」
だ!
完璧だ…美味い…美味いぞ!
馳走になったぞ。
ドドドドド!
どけどけい、武田騎馬軍団が罷り通るぞ。甲州武者は血気盛んだから、突進したら止まらない。でも、「山梨走り」は我が騎馬軍団では御法度だ!
公道で、独りよがりな乗馬は許さないぞ!
・天才と何とかは紙一重だ
もう信州小諸だな。
ここ小諸は武田家の信濃東部営業所本部があり、¨天才軍師の山本勘助を派遣して城も築かせたくらい重要な土地だ。
しかしアイツ、どこに居るんだろう…出迎えるって手紙に書いてあったけど…
わ⁉ 急に後ろからなんだ‼
なんだ山本か。驚かせるな。まったく、何かっていうと「啄木鳥戦法」を使うのがお前の悪いところだぞ。いつか身を亡ぼすんじゃないかと心配だ。
あとだな、普通、城っていったら高台に築くものだろう?それで領民が立派な城を仰ぎ見て、畏怖したり安心したりするもんじゃん。
でもここ『小諸城』は町より低い所に築いちゃったから、みんな上から覗き込むかたちになるじゃん。…ちょっとデザイン攻めすぎてない?山本。守るはずのお城が攻めまくってるなんてシャレにもならないぞ…
え?マニアックな連中は日本唯一の『穴城』とか『鍋蓋城』なんて呼んで有難がっているって…さすが武田信玄だって言ってるって?ほう…
山本、その眼帯すこし古くなったんじゃないか?今度オレが買ってやろう。武田菱の入ったカッコイイヤツな。
・逆らう奴らはこうだ
腹が減っては戦ができぬ。山本、兵糧を賄えるところはないか?べつに「ほうとう」じゃなくたっていいよ。
そりゃ好きだけどさ、だからって毎日食べてるわけじゃないし。
信濃っていえば蕎麦か。大いに結構だな。
『はりこし亭』か。
店主、この店に5,000の軍勢で入店することは出来るか?できないか、そうか。山本、入るぞ!
フフフ、知っているぞ。オレ、『孫子』愛読しているくらいだからな。
この蕎麦の盛り方。「ぼっち盛り」っていうんじゃなかったかな?ぼっちを漢字で書くと「法師」。どうも信濃北部の戸隠地方で、一人修業をしていた法師たちから生じた言葉らしいな。この蕎麦の小分け一山をぼっちと称して、戸隠神社が5社あることから、5ぼっちが一人前になったらしいぞ。
ぼっちか…お館様なんて言われてチヤホヤされていても、そのじつ戦国大名なんて孤独なものさ。いつか裏切られるんじゃないか…裏切ってしまうんじゃないか…親兄弟でも信じちゃダメだ…でもさ、オレの事を信じてついて来てくれる家臣たち…お前たちだけはオレ、信じてみ…
おい!山本、鍋に掛かりっきりで聴いているのか、人の話を。まったく…戦場でもそんな真剣な顔を見せた事がないぞ。
いったい鍋がどうしたと…なんだ⁉ グラグラと煮えたぎっている!
これは一体…
なに⁉『おとうじ蕎麦』だと。
蕎麦を鍋に投じるから、おとうじか。フン、シャレてるな。
フフフ、そうだな、この煮えたぎっている鍋にこうして…信濃の山出し連中のソウルフードである蕎麦を…こう…こうして…無慈悲に投じてくれるわ!どうだ、オレが恐ろしいか。ガハハハハッ、思い知ったか!
さて…フーフー、ズルズル、モグモグ…美味いな。これは。鍋への投入時間や投入部分によって蕎麦に食感や温令の違う部分が生じて、飽きないぞ、これは。
う~ん、たいへん馳走になった。
おとうじか…オレも戦国の世の地獄鍋に身を投じている者の一人。おとうじ蕎麦のように味のある大将になりたいものよ。なんちゃって。グワハハハ!
…食べたら何か眠くなってきたな。信濃にも美味いものがあると分かったことだし。今回はこれくらいにしておいてやるか。信濃の案山子武者ども、命拾いしたな。
甲斐に帰るぞ昌豊、退却の鐘を鳴らせい!